2019年02月20日

ワンナイトサンバ。

2005年リリースの『青い月』に収録した「ワンナイトサンバ」のレコーディングはとても思い出深い。『青い月』は盟友・河村博司さんとの共同作品。『青い月』制作時、ほぼ毎日しかも長時間河村さんとお互いの家に寝に帰る以外一緒にいた。『青い月』そして『Hug』のレコーディングは河村さんが在籍していたソウルフラワーユニオンの事務所ブレスト音楽出版の1室を貸していただき行なっている。その部屋は普通のレコーディングスタジオのように防音されてはいないが、独特の良い響きがある広めの部屋で長い時間居ても窮屈になることもなく居心地がよかった。

ある日「ワンナイトサンバ」を録音してみたが良い感じのものが中々録れず。録音方法を色々試してるうちに夜中を超え朝を迎えようとしていた。試しにマイクをたった1本設置してその前に座り込む形でガットギターを弾きながら歌った感じが今まで録音されたものより良い雰囲気を醸し出していた。何テイクか続けたかも。でも記憶が朧げ・・。ずっと作業を続けていて頭もハイになったままだった。録音しながら気になっていたのは、防音されていない部屋なので外の音が入る可能性だった。その部屋があったビルに朝ゴミ収集車がやってくるので、せっかく良いテイクが録れ始めたとしても収集車のエンジン音やバックする時に鳴る「ピー・ピー」のような音が入ってしまうかもしれない。。。

運良く収集車がくる前にベストテイクが録音できた。1本のマイクで歌もギターもいっぺんに録ったこともあり部屋の空間もそのまま記録されたような音。「ワンナイトサンバ」を聴くとあの早朝とその後のまぶしかった朝の光を思い出す。

この曲にはトロンボーンが重ねられている。吹いているのは村田陽一さん。かつて「JAGATARA(じゃがたら)」というバンドのメンバーだった村田さんの音を初めて生で聴いたのは約30年前。ご自身のバンドや数々のライヴやレコーディング、至る所でキャリアを積んできた村田さん。最近だと椎名林檎さんのバンドで吹いてる姿を映像で拝見した。『青い月』収録曲で「ワンナイトサンバ」「美しい島(くに)」「扉」の3曲に村田さんがトロンボーンで参加しているが、とりわけ「ワンナイトサンバ」のダビングレコーディング時のことは忘れることができない。

あの早朝一発録音してから数日後「ワンナイトサンバ」を一度さらっと聴いただけで村田さんは1曲丸々凄い演奏をし録音した。河村さんと私はその音を聴いて同じように「凄い」と思ったけど、2人共「何かはわからないが<何か>が少し足りない・・」ということと今の演奏を上回るものがまだこの後出るんじゃないかと期待して「もう一度お願いできますか?」と村田さんに伝えた。その言葉を聞いた村田さんはあからさまに不機嫌な感じで「どうして?」と訊いてきた。空気が凍った。「えーーーと・・今のも本当に素晴らしいと思うんですがもう一度トライしていただけませんか?」と再度伝えると「この曲のように弱い音でずっと吹き続けると唇が一度でダメになってしまい復帰するのに時間がかかるんだよ。」と言われた。でも少し時間を置いてもう一度吹いてもらえることになった。そして2テイク目。完璧だった。1テイク目をはるかに超える演奏。ただうまいだけじゃない。一緒に演奏してるわけではないのに歌への寄り添い方の素晴らしさ、即興で繰り出すメロディの引き出しの多さとその1音1音に全て意味を見いだせるほどの職人技にクラクラした。もちろんその2テイク目を採用した。村田さんは1テイク目から本気で臨んでもらい、もしかしたら失礼なお願いで嫌な思いをさせてしまったと思うが、あの時にあきらめなくて良かったと聴くたびに心から思える。

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posted by ハシケン at 20:12| Comment(0) | 曲について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする