2019年04月23日

走る人。

2000年6月リリースのアルバム『限りなくあの空に近い』に収録した「走る人」。この曲ときってもきれないお店がある。うちの姉が店長をしていた赤坂にあったメキシコ民芸品を売るお店「カフェ・イ・アルテ」(コーヒーと芸術<美術>という意味。)。20代の頃このお店でイベントがあると臨時バイトとして車の運転や棚卸しを手伝っていたりした(カフェ・イ・アルテはこちらにも登場)。

常に「カフェ・イ・アルテ」店内ではメキシコ音楽が流れていた。その中で特に私が惹かれたのは「マリアッチ」。マリアッチは音楽のジャンル名ではなく数名から数十名で、トランペット、ギター、バイオリン、低音部パートのギター・ギタロンなどで構成される「楽団」のことを意味するらしい。カフェ・イ・アルテでも販売していた憶えがある「チャロ」と呼ばれてるカッコイイ服装をマリアッチの皆さんは身につけている。マリアッチの奏でる音楽は、かなり哀愁。ラテンの哀愁は本当に大好きだ。私にとって中南米の音楽、特にメキシコ音楽は「男のしょうもなさ・情けなさ」と哀愁のないまぜ、世界一(歌詞の内容はよくわからないけど音楽そのものから「男のしょうもなさ・情けなさ」を感じてしまう)。

1987年にアメリカで制作された映画「ラ☆バンバ」を私は確かカフェ・イ・アルテに出入りするようになった後にビデオで観ている。1959年、17歳でこの世を去ったメキシコ系アメリカ人ロック歌手リッチー・ヴァレンスの伝記的映画。この映画の主題歌となった「ラ・バンバ」を始めサウンドトラックのほとんどを演奏したのがメキシコ系アメリカ人バンド「ロス・ロボス」。映画が公開された翌年1988年にリリースされたこのバンドの原点回帰とも言える「La Pistola Y El Corazón 」(ピストルと心)というアルバムがありそのアナログをほんと擦り切れるくらいまで聴き倒した。このアルバムの中で特に好きなのが「QUE NADIE SEPA MI SUFRIR」。この曲はメキシコの公用語であるスペイン語で歌われているが私は好きすぎてスペイン語のまま憶えていて何も見ずに歌うことができる。ちなみにあまみエフエムの私の番組「大使は気まぐれ、テゲテゲRADIO」のオープニングで使っている曲は「La Pistola Y El Corazón 」の2曲目に収録されている「Las Amarillas」。カフェ・イ・アルテで聴いたマリアッチとロス・ロボスのアルバムが基本となり、私なりの<猪突猛進>のラブソングの歌詞を載せたのが「走る人」。「走る」イメージは映画「フォレスト・ガンプ」も影響してる気も今書いててしてきた。

「走る人」はデビューした時のバンド「Hasiken」ですでにライヴで演奏している。アルバム『限りなく・・』でレコーディングされたバージョンのアレンジは、バンド「Hasiken」でのアレンジ、マリアッチ、ロス・ロボスそして80年代から日本でも紹介されてブームとなった「ブルガリアン・ヴォイス」を芸術に高めた「フィリップ・クーテフ国立民族音楽・舞踏アンサンブル」の目まぐるしく変化していく器楽アレンジもミックスされていると思う。「フィリップ・クーテフ・・・」のアナログも擦り切れるまで聴いたなぁ。

実際のレコーディングで特に印象的だったのはハシケンフルバンドスタイルでもドラムを叩いてもらった宮田繁男さん。『限りなくあの空に近い』の中で宮田さんには4曲ドラムを叩いてもらっている。レコーディング前に行われた吉祥寺のリハスタで私は初めて宮田さんと会い、早速レコーディングに参加してもらう予定の4曲のリハが始まった。「走る人」は構成がかなり複雑でテーマのコーラス「ラーララーララララララーララーラ」のところは3・3・2・3・3という感じで拍子が変化していく。基本3拍子だが途中4拍子もまぎれる。宮田さんは複雑な構成の楽譜を一度さらっと見ただけで演奏を始め、2回目には実際に収録された形で完璧に演奏した。自分で作っておいて勝手だが正直この曲のドラムを叩くには、かなり時間が必要だと思っていた。でも宮田さんは私の予想をはるかに超える形でスムーズにそしてリズムが全く滞ることなく叩いた(今までの経験で、変拍子がからんでくるリズムは下手をするとリズムが「回らなく」なり「途切れ途切れ」のようになってしまう場合があった)。それは宮田さんが高い技術を持っていた上で「歌」をとっても大切にするドラマーだったからだと思う。

歌詞の後半「38度線」という言葉が出てくる。この言葉のことでレコーディングが始まってからCDの発売元リスペクレコード高橋社長が「もしかしたらこの38度線ってところ、問題にならないかなぁ?」と心配を始めた。この言葉が意味するのは朝鮮半島にある軍事境界線のことだが「境界線を突破するほど相手のことが大好きな人の勢いを象徴的に描いてる場面であって政治的な意味はないです」と私は社長に伝えた。その話はそれ以来出ず元の歌詞のまま収録されリリースされた。

「走る人」は最近だとソロやバイオリンのベチコちゃんとのデュオで演奏する機会が多いけど、『限りなく・・』に収録したバージョンを基本にオーケストラのような大所帯でいつか演奏してみたい。

アーティスト名や音楽の専門的なことをたくさん文中に散りばめましたが、気になったことはぜひ調べてくださいね〜。

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走る人
作詞・曲 ハシケン

理由(わけ)なんてなくて 意味なんてなくて風より早く
駆けていたくて もう止まらなくていい

転びそうになる 君が好きだから海より深く
追い越す景色が背中の彼方に消える

ぐんぐん走る 糸が切れた凧
ぐんぐん走る キレたまま 
ぐーんぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐん

帰らなくていい戻らなくていい 見つめていたい
その先の先 ゆるみぱなしの口元

ぐんぐん走る 糸が切れた凧
ぐんぐん走る キレたまま 
ぐーんぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐん

ぐんぐん走る 糸が切れた凧
ぐんぐん走る キレたまま 
ぐーんぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐん

理由(わけ)なんてなくて 意味なんてなくて風より早く
駆けていたくて もう止まらなくていい

ぐんぐん走る 糸が切れた凧
ぐんぐん走る キレたまま 
ぐーんぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐん
ぐんぐん走る 38度線さえ
ぐんぐん走る 軽く超え 
ぐーんぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐん
ぐんぐん走る 糸が切れた凧
ぐんぐん走る キレたまま 
ぐーんぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐん
ぐんぐんぐんぐんぐんぐん




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「走る人」収録『限りなくあの空に近い』(2000年リリース)
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posted by ハシケン at 13:20| Comment(0) | 曲について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする