その4からの続き。
建物に入ってみると、黒人の人たちが数名いてすでに何か儀式が始まりそうな雰囲気だった。部屋の奥に黒いマリア像が飾ってあった。だんだん人が増えておそらく20人くらいはいたと思う。1人の黒人女性が歌い出すとそれに呼応する形でみんなが歌い出す。オスカル・バルデスから習っていたキューバ式のコール&レスポンス「コロイギア」の原型がそこにあった。だんだんとテンポも上がっていきリーダー的に歌う人を真ん中にいて他の人たちは、その周りをぐるぐるとみんなで回り円を描き始めた。そこにいる人たちがトランス状態になっていくのがわかった。私自身も高揚していった。いつその儀式が終わってその建物を出たのかよく憶えていない。建物を出て少し歩くと運転手のアントニオが待っていてくれた。「どうだった?」「すごかったけど、なんで私はあの儀式に参加できたんだろう?」「おまえが有色人種だからだと思うよ」。調べてみると同じような儀式がブラジルでは「カンドンブレ」という名前であるらしい。今から思うと奄美の八月踊りとの共通性もある。私が音楽をやる意味の原点となってる出来事の一つ。
