好きなようにうたう。
好きなようにうたうから、
ハシケンさんのうたのようにうたう。
すでに他人がリリースしている曲を
歌うとカバーソングとなるが、
ハシケンさんの場合、いわゆる
カバーソングかというと、、、
それは違う。
多くのカバーソングがアレンジで
覆うことを常とするなら、
むしろハシケンさんは“剥ぎ取っていく”
ようなことをしている。
今回の新譜で言うと、そのあたりが
顕著なのはTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTの「世界の終わり」。
伝説のジャパニーズロックバンドの名曲を、
さらに剝き出しにしてくれている。
詞とメロディ。
その持っている美しさや力を縁取ったり、
露わにするハシケンさんのうた。
ハシケンさんのうたううたは、原初的で
本質的だ。
だから、ハシケンさんの“うた”に、
自作の曲とそうでない曲との境は無いに
等しい。
あいみょんの人気曲から、ジャパニーズ
ロック、ポップスの隠れた名曲、
オペラ生まれのジャズのスタンダード、
そして奄美のシマ唄まで、時代もスタイルも
異なる曲たちと、昨年作られたという
オリジナルの4曲。
その4曲をブリッジにするようにして
連なる全10曲は、つなぎ目が見当たらない。
だから、できれば、何かをする手と目を
休めて、この1枚に向き合うようにして
聞いて欲しい。
最近、ハシケンさんは、畑を耕すことも
生業にしているようだが、
こんな時代だからこそ、土や太陽に近い人の
営みに根付いた、ハシケンさんのうたの力に
期待したい。
屋形英貴(広島エフエム放送・プロデューサー)